ホールドアップ!
友人Mくんと私は、渡米前にしていた三軒茶屋のレンタルビデオ店のバイト仲間でした。
私はバイトを辞めて渡米、Mくんは卒業を機に1年間のアメリカ留学を選びました。
時間的に私の渡米のほうが半年早かったので、Mくんはカリフォルニアの田舎町へ行く前に私に会いに来てくれました。
映画でよく観たニューヨークを実際に見て歩きたかった。
東海岸から西海岸まで、いわゆるコースト・トゥ・コーストのバス旅行がしたかった。
そして、知人がアメリカで暮らしている現状を見てみたかった。
...のだと思います。
ニューヨークには3泊程度の短い滞在でしたが、二人でバイト中によく観た映画の撮影場所なんかを中心に案内してまわりました。
先に書きましたが、Mくんはカリフォルニアへの移動手段をバスで計画しました。
~1年後彼は自らのドライブで2度目のコースト・トゥ・コースト(しかも往復!)をしました~
そんなわけで、私はMくんをポートオーソリティバスターミナルまで見送りました。
チケットを受け取った後「ここでいい」という彼に「じゃあ、がんばって」と別れを告げて私は帰路につきました。
実はその後、彼は犯罪大国アメリカの洗礼を受けることになりました。
このバスターミナルはとてつもなく大きく、一日の利用者数は200,000人と言われています。
のり場の数も果てしなくあります。
Mくんは自分のバスのり場を探しながら向かいました。
すると一人の男が近寄ってきて...
「○×へ行くのか?」
「もう出発するから急いで!」
「早く!こっちだ!」
と非常にあわてた様子。
Mくんは言われるままに彼の後を走りました。
気がつくと彼は袋小路に追い込まれていました。
ヤバイと思うまもなく刃物を突きつけられ、ポケットに入っていたお金のすべてを盗られてしまいました。
「ほかにもあるだろ!」という男に、「それがすべてだ」と言いました。
普通こういう場面では持ち金のすべてを盗られるものですが、リュックサックを背負ったいかにも学生な姿が効果的だったのでしょう。
男は手にした現金だけを持ってその場を立ち去りました。
実はMくん、リュックサックの中に多額の現金を持っておりました。
これから新しい生活をはじめるわけですから、それ相応の額をもっていたそうです。
もし男がリュックサックの中までチェックしていたら...と考えると恐ろしくてたまりません。
多くのアメリカ人は騙されたり、裏切られたりすると自分の立場に関係なく逆上しやすくなりますので、お金目的だったはずなのにカッとして "つい刺してしまう" なんてことがよくあるそうです。
後日、私はこの話を知り、バスに乗るところまで見送らなかった自分を責めました。
自分がニューヨークに来て1週間くらいのころどんなだったかを思いおこしていれば、当然バスまで送ったはずでした。
そして、犯人が突発的にMくんを選んだのではなく、ずっと私たち二人に目をつけてチャンスを伺っていたのではないか...と思うと腹が立って仕方ありませんでした。




