欧米的な考え方がぶつかった壁 まとめ編
数回にわけて書いた記事ですが、ここでまとめておきます。
一部修正しております。
まずは時間的なことの整理のために書いておきますね。
89年 8月 ニューヨークへ
92年 9月 ニューヨークより帰国 11月 旅行会社(海外旅行の現地手配をする会社)入社 シドニーへ
94年11月 福岡に転勤 以降は国内移動
というわけで、福岡に到着したときには(比較的)欧米的な考え方をしていた私。
当然日本の社会ではぶつかる壁も多く「つもり」の多さが目立ちました。
「自分はちゃんとやってるつもり...」とか、そういうやつです。
日本の会社社会の中では小さな壁はいくらでもあって、ひとつずつ真摯に受け止めて直していこうなんて謙虚な姿勢でいると "うつ" になりかねませんので、私は "ON" と "OFF" を切り替えていこうと考えました。
割り切りで上手くやっていけるんじゃないかと甘く考えたわけです。
ところが、あるとき取引先との電話を切った私に支店長がこう言いました。
「お前の "すみません" は軽いと思う。どれだけ悪いと思っているのかが伝わってこない...ところがある。」
これだけはっきりと指摘していただけるのは、とてもありがたいことです。
私は支店長を尊敬しておりましたので、このときに初めて「このままではいけないんじゃないか?」と考えるようになり、その反面「そんな簡単に人って変われないんじゃないか?」とものすごく客観的に冷めた目で見ている自分がいたりして、しばらく悩みました。
さて、そんな私が「このままではいけない」と本気で感じた出来事がありました。
私の勤めた会社は旅行代理店の下請けで、海外旅行の現地手配をしていました。
海外旅行の卸業者と言う方が一般的にはイメージしていただきやすいかもしれません。
(旅行業の方には「はぁ?」と言われるでしょうけど・汗)
私は福岡支店で出た欠員の穴埋めとして赴任したので、前任者から多くの仕事を引き継ぎました。
その中にオーストラリア行きの修学旅行手配が含まれておりました。
先に書きましたように修学旅行を受注したのは世間に名の知れた旅行代理店で、私たちはその下請け。
オーストラリアでの宿、食事、バス、ガイドなどの手配が仕事でした。
ツアーが終了すると現地支店からレポートが入ります。
ほとんどは「無事終了しました。」なのですが、この修学旅行のレポートにはこう書かれていました。
「最終日空港にて添乗員がスーツケースを紛失。バスから荷物を降ろしチェックインのための混乱時に何者かが持ち去った可能性。添乗員は日本で解決するとのこと。」
空港に到着すると、お客様のスーツケースなどの荷物をバスから降ろし、添乗員なりガイドなりが個数を確認します。
その後、航空会社のチェックインカウンターへ荷物を移動するのですが、短時間に終えなくてはならないため、現場はかなり慌しくなります。
人数の多い団体は尚更です。
このバタバタの中で何者かが添乗員のスーツケースを持ち去ったようでした。
一般的に添乗員はそれ専門の会社や人に代理店が依頼するケースが多く、代理店の社員が添乗することはそれほどありません。
が、このときの添乗員は旅行代理店の営業マンで、出発まで私が打ち合わせを重ねた人でした。
(修学旅行をした学校担当の営業マンということです)
空港での添乗員、ガイドには仕事がたくさんあり、自分の荷物がなくなったからとその場を離れるわけにもいかず、盗難届けを提出する時間が無いので「日本で解決する」とガイドに言って添乗員は帰国しました。
結局私たちが手配したガイドがツアーを見送った後、盗難の被害届を出しました。
何百と並んだスーツケースの中から無くなった1個が添乗員のものであったことは不幸中の幸いと、私は解釈しました。
「スーツケース盗られたんですってね!?」といった軽い感じを想定して、私は営業マン(添乗員)に電話しました。
すると...
彼は大変憤慨しております。
「お前んとこのガイドがボーッとしてるからスーツケース盗られたじゃねえかよ!」
...あれぇ???? どうなってんの????
彼は「どうしてくれんだよ?」という状態だったし、終了レポートの内容と根本的に食い違う話だったので、とにかく状況を再確認しようと電話を切り、シドニーへ電話。
「修学旅行なので当然ベテランガイドを使っていて、空港到着時にはガイドだってやるべき仕事がたくさんあるから、添乗員の荷物を見張っているわけにはいかないし、そもそも見ててくれと頼まれたわけでもない。」
ということでした。
欧米的な考え方の私は、「旅行のプロである添乗員が自分の荷物を盗られたのは恥ずかしいこと。自己管理ができていなかった証拠。自分が悪いんだから自分で保険処理してください。」でした。
私は「自分で保険処理してください。」を言うために彼に会いに行きました。
彼は清算などで忙しくしていて、私は少し待ちました。
その間にコワモテの上司がやってきて...
「ああ、○○さん?話は聞いたよ。あいつ怒ってるよ~。あんな穏やかなヤツが電話であんな言い方をするなんて、初めて見たよ。あいつ同僚にも影響力あるしさ、きっちりしてやってよ。もうあなたのとこ使わないなんて言い出したら大変じゃない。頼んだよ。」
...何じゃ? どういうことだ? 脅してんのか?
本人が来てくれました。
やはり怒っています。(っていうか、怒っているフリをしているように見えました。)
彼はどうして私たちの会社に仕事を依頼したか...など、持ち上げることを最初に言ってから、「なのにこのありさま。どうしてくれるんだ?」と締めくくりました。
仕事を依頼している側が常に立場が上だという考え方の人らしいものの言い方でした。
私は差し障りなさそうな言葉を選んで、
・ガイドに業務上の落度はなかったこと。
・スーツケースがなくなったのは故意ではなく、アクシデントだったこと。
・彼の保険で対応して欲しいこと。
を伝えました。
ところが彼は「保険には入っていない」の一点張りです。
クレジットカードも一枚も持っていないと言います。
さすがにこの場で「じゃあ貴社の保険を使ってください。」とは言えず、出直すことにしました。
「保険には入っていない」
大手旅行会社の営業で、年に数回はお客様をご案内して海外に行く人が「保険に入っていない」など、到底信用できるわけもなく、クレジットカードを持っていないこともウソっぽい言い訳をするので、つまりは「お前んとこで何とかせぇ」という意味だと解釈しました。
考えれば考えるほど腹が立ってきて、この怒りをどこにぶつければいいのか状態の私。
何がしの弁償をしないと次に進めないことはわかっていましたが、私や現地スタッフの正義感を無視された(添乗員が自分の非を一切認めていないところ)まま、彼の代わりに保険処理することにとても複雑な心境でした。
結局シドニー支店の保険を使うことにして、保険金が支払われるまでに2ヶ月くらいかかることを添乗員に伝え、了承を得ました。
ところが、海外の常で、2ヶ月経ってもまだ保険金は支払われず、保険会社に催促しても「まだ処理が終わっていない」という状況に陥りました。
添乗員からも催促の電話が入るようになりました。
私の心の底には「あんたが悪いんだから待つぐらい待て」という気持ちがありましたが、2ヶ月で保険金が支払われると案内した手前、これが延びてしまっていることには責任を感じていました。
「3ヶ月と言っておけばよかった」という程度に。
結局私はこれを「個の問題」として捉えてしまっていたのです。
会社の問題として考えれば、こんなことはサッサと済ませてしまったほうがいいに決まっていますが、そういう判断ができませんでした。
そこらへんを見抜かれてしまったのでしょうか...
添乗員はこの件を私の会社の先輩に持ちかけました。
その日外回りから帰ってきた先輩が支店長に何やら報告を...
シドニー、スーツケースといった心当たりのある単語が、チョロチョロと聞こえてきました。
すると支店長から呼び出しが...
「例の件、どこまで進んでんの?」
「保険金の支払いが遅れておりまして、待ってもらっている状況です。」
先輩の報告では、添乗員はスーツケースがなくなったことはもちろん、その後の私の対応、態度に対しても怒っているということでした。
「じゃあ、二人で添乗員に会いに行って、もう一度よく状況を説明してきなさい。」と支店長。
先輩と出掛けた道中、このようなアドバイスをいただきました。
「お前の言い分もわかる。でも、そんなことで言い争っても仕方ない。自分たちは仕事を貰っている立場なんだから、相手を怒らせてしまって仕事を貰えなくなるのが一番つまらない。」
それはその通りなのですが、当時の私にとっては「頭で理解できても、実際にはできないこと」でした。
相手が「自分のミスで迷惑をかけて申し訳ない」という物腰であれば、きっと気分良く対応させていただいたことと思うのですが、ここで私がペコペコしては修学旅行の運行に携わった現地スタッフに申し訳ないという気持ちが強く...
応接室で先輩と横並び、添乗員と向かい合いました。
このときの添乗員はかなりの勢いでまくし立てました。
先輩は「仰るとおり。申し訳ない。」と神妙な面持ちで話を聞きました。
私は一言も話さず、お詫びも言わず、頭も下げずで、子供な対応に終始しました。
事務所に戻り支店長に報告。
結局、オーストラリアの保険会社に任せているといつになるかわからないということで請求を取り下げ、私たちの会社が日本でかけていた保険を使うことにし、それもまた時間がかかりますので会社がその保険金を立て替えて添乗員に渡し、その後の営業活動は私に代わって先輩が担当するということで決着しました。
最後まで「ちぇっ!ゴネ得かよ!」と気分の悪かった私ですが、確かに時間が経ってしまったため会社の決定に物申すほどの熱さは失くしていました。
そして、「こんな自分ではやっていけないんじゃないか?」と真剣に考える自分もいました。
以降、自分なりに気をつけて日本流に馴染もうと努力(?)するようになりました。
そして、いつだったか、「あんたの会社に任せた仕事の中で起こったことは、全部あんたの会社の責任だ」と言った取引先の人がいまして、その時に初めてスーツケース盗難の件での自分の対応のまずさを知りました。
「任せる」ということのベースは「信用してんだから」ってことです。
だから、仕事を請ける側もそういう覚悟で請けるものってことなんですね。
スーツケースが無くなった原因のひとつに添乗員の不注意もあったわけですが、それも安全、円滑に旅行を手配するという大前提で仕事を請けた私たちの会社の責任の中で起こったこと。
「会社の責任>添乗員の責任」というわけです。
この解釈が正しいか、間違っているか、正直今でも他人様に語れるほどわかっておりません。
そういう考え方もあるってことを学んだにすぎません。
特にサービス業の場合は、義務の部分をこなせばいいとか、決まったサービスを提供すればいいとかではなく、最後まで綺麗に終わらせて、気分良くお支払いいただいて終了ってことなので、いろいろと判断の難しいことが起こります。
添乗員に対して今思うところは、あのコワモテの上司にやらされていた部分があったんじゃないかってことです。
決して私も無謀な主張をしたわけではありませんので、話し合いの中で「その点に関しては自分が悪かった」と思うところもあったんじゃないかと思うのです。
でもそれを認めてしまうと上司に腰抜け扱いされてしまうような事情があったと考えると、話にスジが通ります。
あの場面で私がそのことに気付いていれば...
っていうか、気付いてないのは私だけだったのかな?



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