私のスタンド・バイ・ミー その2
* こちらにまとめ編をアップロードしましたので、よろしければどうぞ。
前回の続きです。
わずか10歳にして、経済観念は人それぞれなんですね。
180円のラーメンを食べに行く所持金、私は200円、慎重派は500円、無謀な100円...
往路途中で、Oくんが缶ジュースを買って、全員で回し飲みしました。
残念ながら何を買ったか、おいしかったのか、全く憶えておりません。
そして、私たちはまた松阪目指してペダルを漕ぎはじめました。
国道脇の看板が私たちが松阪市に入ったことを知らせたころ、私はパンツの履き心地の悪さが気になりはじめました。
誰かが大声で言いました。
「パンツぴりぴりやぁ~」
皆が口々に言いました。
「うん。パンツぴりぴりやぁ~」
「あはははあはは!」
それからしばらくは「パンツぴりぴり」の大合唱になりました。
ながく自転車を漕ぎ続けてきたことで、パンツがズレてきたのですが、ある者は「パンツの生地が薄くなった」と言いました。
抜群のセンサーを持つおしりです。注射のときはよっぽど痛かったでしょうね。(笑)
ここまでの道のりはとてつもなく長く、途中でリタイヤを何度も考えましたが、
「パンツぴりぴり事件」のおかげでそこから三交百貨店まではイッキに進めました。
三交百貨店に到着すると、私たちは自転車を横並びに整列させ、ダッシュで地下へ。
Oくんが先頭になり、ラーメン屋に一直線です。
そこはカウンター席のみのこじんまりとしたスペースで、カウンター向こうにはおじいさん、おばあさんが一人ずついました。
私たちは全員が同時に席に着くことができました。
「ラーメン!」
「ボクも!」「ボクも!」...
味は覚えていませんが、
「むちゃくちゃ美味しいラーメン」と聞いていただけに「普通だな」と思った記憶があります。
それよりも私の頭からは校則違反を犯しているという緊張感が取れることがなく、「早くしなきゃ」「早く食べなきゃ」と、とにかくそこから早く立ち去ることばかり考え、ラーメンを味わう余裕などなかった気がします。
何しろ子供たちだけで学校区の外へ出ることが禁じられていた中、松阪までやってきて、ラーメンを食べているのですから、見つかったときの罰は、全校集会で校長から「こんなことがありました」と発表され、一日中廊下に立たされ、体育の授業も見学させられ、給食はおあずけで... 考えられることのすべてが抱き合わせになって課せられる気がしていました。
すると...
誰かが言いました。
「ボクらこのラーメンを食べに伊勢からきたんやんな」
私は一瞬固まりました。
このまま捕まって、警察に連れて行かれるのでは...と、表現しきれない暗黒世界に一瞬でトリップしていました。
おばあちゃんは...
「え~っ!?」
「ちょっと、ちょっと、この子らここのラーメン食べに伊勢から来たんやって!」
客らしき別のおばさんがこの話に便乗し、
「え~っ!? 何とな!? 子供らだけで来たんかな?」
「そう」
「どうやって来たんやな? 電車かな?」
「ううん。自転車で来たんや」
やめろ、やめろ、やめてくれ~っ!
「そうかな。気つけて帰らないかんな。」
というおばあさんの一言で、私は暗黒世界から戻ってきました。
おばあさんの表情はやさしく、私を安心させるに充分でした。
ラーメンを食べ終えた私たちはすぐに自転車に乗り...
そこで誰かが言いました。
「松阪公園へ行ってみよか?」
学校の遠足で行った、城跡のことです。
私はモーレツに反対しました。
親に何も言わずに出てきたので、暗くなる前に帰りたかったのです。
続きは次回。


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